みなさんはご近所に住む外国人の方を見かけたとき、「仲良くしたいけれど、何を話したらいいだろう」と思ったことはありませんか? その背景には「文化が違うから、接し方がわからない」という気持ちがどこかにあるのかもしれません。
その戸惑いは外国人にとっても同様です。京都に住むフィンランド出身のニーナさんも、外国人女性が日本で暮らすために必要な知識が不足していることに困っていました。一般的な外国人向けイベントは日本文化の紹介がほとんどで、ゴミ出しのルールや独特なご近所づきあいなど、暮らしに必要な情報を得られる機会はほとんどありませんでした。
その問題を解決するために、日本人女性と交流する場を設けるといいのでは? そこでニーナさんがはじめたのが「外国人女性の会パルヨン」です。
具体的な活動が「外国人女性のためのなんでもしゃべれる会プフー」など、ご近所に住む外国人との付き合い方を学べる日本人向けのワークショップや情報発信を行うこと。「プフー」とはフィンランド語で「しゃべる」という意味で、日本人女性と外国人女性が日頃抱えている悩みを何でも共有できる場をつくっています。
例えば、日本での子育てで直面するのが言語の発達の問題。「移民先で子育てする際に、何語で話しかけるのが良いのか?」ということは、世界的に研究が進んでおり、親にとって一番馴染みのある第一言語で話すほうが良いことはすでに証明されています。しかし、一時的に移民先の言語の発達が遅れて見えるため、このような知識がないと、身近な人から「育て方が悪い」と言われて悩んでしまうこともあるのだとか。また、市役所や病院といった公共機関での手続きでも言葉の壁は大きいようです。このように外国人がどんな助けを必要としているのかを具体的に知ることで、よりいっそう距離は近づいていくのです。
ポイントは日本人だけ、外国人だけに狭めず、一緒に活動をしていること、そしてコミュニケーションの共通言語として「やさしい日本語」を利用していることです。「やさしい日本語」は、できるだけ簡単な単語や文章を使った外国人にも理解しやすい日本語のこと。共通言語と聞くと英語が思い浮かぶ人も多いかもしれませんが、英語に抵抗感のある日本人が少なくないように、外国人定住者の中にも簡単な日本語の方が英語よりも理解できる、という方も実は多いのです。
このアイデアが本質的な解決策といえるのは、日本人と外国人といった垣根を越えて、仲間になれるからかもしれません。ニーナさんたちも、この活動の一番の成果として「居場所ができたこと」と笑顔で話してくれました。
もしご近所に住む外国人に出会ったときは、勇気を出してやさしい日本語で声をかけてみませんか? きっと新しい発見があるはずです。
記事の執筆 京都精華大学人文学部学生
- この記事は、第3回市民ライター講座に参加した京都精華大学の学生の皆さんに執筆いただいた記事です。
- 外国人女性の会 パルヨンの活動は、「まちづくり・お宝バンク」に登録されている取組です。