まちづくり・お宝バンク

お宝No.125
「深草土」継承プロジェクト

提案者:  「深草土」継承プロジェクト (伏見区)

 「深草土」は、数寄屋建築や庭園を支えてきた、深草大亀谷およびその周辺から産する土・砂利のことを指す。

 かつて、現在の上京区や伏見区深草地域に集積していた土の採取・加工業者はほとんどなくなり、現在では、茶室や料亭、文化財修復の場で使われる京都の良質の土の多くが、深草産である。

 「深草土」をとりまく状況は大変厳しいが、市民として特に問題と考えるのは、日本文化を代表する建物や庭園、あるいは京都らしさを育んできた京町家や土塀などに、この資源が希少性と有用性を以て珍重されていることを、地元地域あるいは京都市民のほとんどが知らないということである。

 「深草土」継承プロジェクトは、文化の面からは、土を使った京都の文化を知り、歴史の面からは、地場産業とのかかわりを知り、未来に向けては、知りえた成果を多くの京都市民に知ってもらい、産業と文化の継続が京都の誇りとなるよう働きかけることを目的とする。

 そのためには、地元住民だけではなく、行政の諸分野や、各領域の専門家の横断的な知恵の集積が欠かせないため、まち・ひと・しごと・こころ京都創生の、テーマⅣおよびテーマⅤ、テーマⅡに関わる提案として提出し、主に以下の三つについて協働の取り組みが前進することを期待する。

1.深草土とそれが使われる日本の優れた建築・文化の関係について、これまでの数年にわたる聞き取りや現在残る資料をまとめる資料作り。

(関係する事業者や地元古老への聞き取りに加え、地域外の同業者への聞き取り、左官、造園、工務店や最終製品に関わる関係業界、数寄屋建築や町家等の研究者、地質学、文化財修復に関わる関係各所へのインタビューを継続中。深草特に大亀谷付近の高級土・砂利の産地だけでなく、関連する地場産業や近代の京都ベンチャーとの関係などから、深草支所管内のみならず、東山区南部、伏見区醍醐地域北部および桃山丘陵、山科区西部等も含めた資料が必要)。

2.地元を中心に京都市民が理解と協力を示すための、文化セミナーや見学会、体験会などの開催を立案。

(上記1で作成する資料をもとに、各専門家らの協力を得て、現在ほとんど文化的な評価を得られていない「深草土」の京都文化への貢献について、土壁文化や和風建築に親しんでいた中高年世代が再評価し次世代に伝えていくための文化セミナー等の形で、啓発活動を行いたい。地元や地元に関心のある人に対しては、深草の古くからの地場産業や近現代の開発の歴史と大きくかかわる「深草土」の歴史をたどり、多様に関係する場所の見学ツアーなどを開催したい。これまでに、地域のコミュニティ・カフェの壁を作る多世代での土壁塗りワークショップの開催や、特徴的な土壁の街並みをめぐり左官を体験する民間の「深草土ツアー」を実施したが、地域での取り組みはまだこの二つにしか過ぎない)。

3.今後も京都市民が「深草土」を使っていけるよう、採取・加工を続行している関係業者の協力のもと、見学受け入れや土の文化を紹介する簡易な展示施設等の計画を検討する。

(かつて京都市広域から地層の学習で子ども達が多数訪れたエリアであり、現在産業廃棄物の撤去に取り組むエリアに隣接していることから、理科教育や環境学習とつなげることも可能。稲荷山からつながる京都一周トレイルや、京都市に寄贈された鎮守池の整備可能性などがあれば、それらも含めて検討する)。

 なお、深草土・砂利を使った建築・造園・製品などには以下のような例がある。

 まず、<土壁>。上塗用の色土、また中塗土、荒壁の土としても「深草土」が使われる。稲荷大社の茶室、桂離宮の待合等、東寺の塀の修復などにも使われている。平成の京町家のモデルハウスの壁も深草土が用いられている。

 また、左官職人にも高度な技術が必要とされる<茶室の炉壇>にも使われる。

 稲荷山周辺には古くから土師の記録があり、陶器や伏見人形が作られてきたことなどに代表されるように<陶器の土>、深草の特産として知られたが現在ほとんど出ていない<瓦の土>、近代化に貢献したであろう<煉瓦の土>、現在でも大阪場所などに提供している<相撲の土俵>、大亀谷が最上とされたが現在採取がなくなった<おりんの材料>としても使われてきた。

 また、砂利では、深草が最上とされ「深草たたき風に仕上げる」「深草洗い出しのような風合い」と使われる<三和土(たたき)>、数寄屋建築では特にこの部分を「深草」という<犬走り>(産地の地名が代名詞になっている)、京都御所内の池や最近では京都御苑の閑院宮邸の池など<池や井戸の水止め>にも使われる。

 また、関係する事業者として、地元には主に、土・砂利の採取業者と、土・砂利(以下「土」)の加工・製造業者がある。これらの業者の段階で、原土での色の調整等もおこない、工務店や左官などから依頼があった場合は、好みに応じるためのブレンドもおこなう。このため、採取業者、加工・製造業者はともに、「土」の目利きでなければならない。

 ただし、採取業者、加工・製造業者はともに、自分たちが納品した「土」が最終的にどこにどのように使われたかを、断片的にしか知ることがないため、自らが「土」の産地ブランドを標榜して主張することはこれまでほとんどなかった。こうした分業の細かさは、目利きを支えていた利点でもあるが、業界全体が縮小するにあたって貢献度を主張する根拠に乏しくなり、現状の地元での知名度の低さの要因ともなっている(ただし、地元での知名度の低さは、地形的な特徴と、「土」の採取でできた穴を埋めていった数十年にわたる産業廃棄物の問題にも大きく起因する)。

 40年ほど前までは、深草地域に7~8軒ほどの同業者が集積していたが、現在は深草には、採取業者1軒、加工・製造業者1軒のみである(専業の加工・製造業者は市内で2軒のみ)。

(①主体的取組型)

進捗状況・成果

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お宝No.125 登録情報
提案者 「深草土」継承プロジェクト
提案者の区分 市民グループ・地域団体 
提案者の所在地 伏見区 
提案のカテゴリー 文化・芸術 
提案に関連するSDGsの目標番号
SDGsとは リンク先の目標番号のアイコンを選択すると詳細が表示されます)
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