お宝No.61
息づいてこその文化 ~きもの産業の生業としての再生について~
提案者: (植田 修)
京都の着物業界を取り巻く環境は、生産量の低下、熟練した職人の高齢化や後継者不足など、50年の間で劇的に変化しております。
このままでは、世界に誇る西陣織や京友禅が、博物館の展示品になってしまい、生活に息づいている文化として感じ、ふれることができなくなるのではないか。
着物業界の今後の方向性、伝統産業としての着物を後世にしっかりと継承していくことについて、真剣に取り組むべき最後の時期が今まさに迫っており、その点を踏まえまして、いくつかの提案をさせていただきたい。
【提案】
①着物振興のためのプロジェクトチーム結成
着物の将来を見据えた取組を行っていくためにも、分業化されている生産・流通工程の各業者や小売業者のほか、和裁業界、着付け業者などの着物関係者はもとより、着物との縁が深い茶道家や華道家など芸道の方々や観光業、メディアなど広範囲の事業者が連携する場を創出する。
店頭販売等で消費者と接する呉服売り場の店員や呉服営業マンなどに対して、着物のTPOや所作、着付けのほか素材、染色、仕立などの着物に関する最低限の知識を習得できる機会を作っていくことで、消費者に納得して買ってもらえるようにしていくことも大切である。
②あらゆる機会を通じたPR
2020年には、東京でオリンピックが開催される。開会式の入場行進において、日本の選手団が、男子は羽織袴、女子は振袖で臨んでいただけたら、世界各国からどれだけの高評価をいただけるのだろうと、考えただけでも、胸が高鳴り、嬉しくなる。
着物姿の入場行進は夢物語であるが、国際的な大規模イベントはもとより、国内では様々なイベントが開催されており、海外にも目を向ければ、イベントの数は計り知れない。
着物の魅力をしっかりと伝えていくためにも、イベントなどあらゆる機会を通じてPRしていかなければならない。
③着物に関するアンケート調査
近頃、修学旅行生や観光客の若年層、外国人観光客の方々が、着物姿で京都のまちを歩き、観光を楽しんでおられる光景をよく見かけるようになった。確かに着物にふれるきっかけとして、手軽であるレンタル着物は一つの方法であるのかもしれない。ただ、その利用者は、着物やきもの姿を良いものだと感じてくれたのだろうか。「きもの姿で観光すると色々特典があって得だから」とか、「自分では着ることができない不便なもの」「着てみると動きにくく、着心地が悪い」などと感じていることはないだろうか。
着物姿の観光客や成人式や大学卒業式での振袖等を着ている若者などを対象に、アンケートをとり、着物の消費者・利用者が着物に対してどう思っているのかを積極的に把握することが必要ではないか。
また、全国の小売店等にも同じくアンケートをとり、着物集散地である京都に求めるものや消費者の動向等を調査し、今後のきものづくりや販売方法等に活用していくことも必要と思われる。
着物は「着るもの」であり、生活に息づいていてこその文化であり、博物館に飾られるべきものではない。
先述の提案を取り組まれることがあれば、長年、着物業界に携わってきた者として、微力ながら着物振興に協力させていただきたい。また、着物に関するその他の提案や取組についても、これまでの経験を活用していただければと思う。
(③提案・参加希望型)
進捗状況・成果
寄せられたご意見・応援
現在寄せられているご意見・応援 0 件
公開されている、ご意見・応援はありません。 「ご意見・応援 フォーム」より、投稿をお待ちしております。