【7/26(金)】旧伴家住宅2階ラウンジで「祇園祭」物語をテーマに研究発表と実演を催します!

「京都では、祇園さんがお正月どす」

7月になると京都の街は祇園祭一色。中京区に開館した翌年の2016年から2019年まで毎年7月15日夜の「祇園天幕映画祭」に協力させて貰いました。歩行者天国になった四条通の四条大橋から八坂神社の間にスクリーンを2か所に立てて、様々な映像を見て貰う趣向で、当館所蔵の映像も道行く人々に足を止めて見て貰いました。

この2019年は祇園祭が創始されて1150年を数えるのを記念して、祇園祭発祥の地とされる神泉苑や京都三条会商店街にある八坂神社の御旅所に3基の御神輿が揃ってお参りされる特別な還幸祭(7月24日後祭)が営まれました。久世稚児らがミュージアムすぐ傍の武信神社にお参りされることも分かって、それらを見学する催しを企画しました。夕方に、“京都ニュース”で記録された「祇園祭」の数々、現存最古の大正時代の山鉾巡行の映像、今では見られない武者行列が映る映像などもご覧いただきました。そして、映画『祇園祭』(1986年、山内鉄也監督)を大阪芸術大学の研究費で復元をした経緯などを話しました。この後みんなで還幸祭を見学しました。御旅所周辺は黒山の人だかりで大変な熱気だったことを今も鮮明に覚えています。

それ以降、毎年趣向を替え乍ら映画『祇園祭』をテーマにして研究発表会と展示をやってきました。その目的は、この作品が京都府百年記念事業の一環として、日本映画復興協会(代表 中村錦之助)の手によって映画化され、大勢の府・市民が協力して作られたにも関わらず、祇園祭山鉾巡行が行われる7月17日と24日と、それぞれの前日の4日間に限り、京都文化博物館でフィルム上映されるという閉鎖的な状態になっていて、もっと国内外の人々にも気軽にこの作品を鑑賞できる開かれた状態にならないものかと思うからです。この映画は、製作時に於ける諸事情の結果、京都府の所蔵となっています。

この願いのもとに映画『祇園祭』を取り上げて、今年で6年目を数えます。展示は7月28日まで「毛利清二の世界 映画とテレビドラマを彩る刺青展」をしていますので、今年は特別なことをしませんが、代わりに毎月第4金曜日夜に旧伴家住宅(京都市登録有形文化財)でやっている催しの機会を、6年目の場にします。以下に紹介する研究者2人による講演と、京都大学人文科学研究所所蔵の幻灯台本『祇園祭』と、京都民科歴史部会旧蔵の幻灯フィルム画像を用いての幻灯上映をします。

◆日時:2024年7月26日(金)19:30~20:50

◆場所:カンデオホテルズ京都烏丸六角レセプション棟(旧伴家住宅)2階ラウンジ

◆参加費 :1500円、学生(学生証持参)と同ホテル宿泊者1000円(当日19時から2階への上り口に設ける受付で現金にてお支払いください)

◆定員:12名(予約優先)

申し込みは、おもちゃ映画ミュージアム☎075-803-0033、電子メールinfo@toyfilm-museum.jpでお願いいたします。

 

◎タイトル:『祇園祭』物語をめぐるメディアミックス創作

【プログラム】

◎挨拶 高木博志

◎講演①紙屋牧子「『祇園祭』物語を読み直す-紙芝居・幻灯・小説・映画」

概要:映画『祇園祭』(1968年)をめぐって勃発したいわゆる「『祇園祭』論争」(監督を降板した伊藤大輔と製作側との主張の食い違い)は、今なお汲み尽くすことのできない様々な問題を含んでいる。本発表では、伊藤が映画化を構想した契機となった紙芝居(1952年)、そして幻灯といった原点に立ち帰って、映画『祇園祭』が目指した事を問い直す。また「論争」の火種ともなった西口克己の小説(1961年)も射程に入れ、『祇園祭』物語をめぐる作り手たちのイデオロギーについて考察する。

◎講演②鷲谷花「《国民・民族の歴史と文化》の再発見/再創造をめぐる物語とイメージ」

概要:日本共産党の文化政策の一環として1950年代に始動した「国民的歴史学運動」は、「民衆が自ら《国民・民族》の歴史と文化を再発見/再創造する」という目標を掲げ、その実践のために、映画のみならず、多様な視聴覚メディアが活用された。本発表では、1950年代の幻灯や紙芝居、あるいは人形劇といった低コスト・草の根のメディアが、どのような「国民の歴史」の物語の創造を試みたかを、一連の「祇園祭」ものを中心に検証する。

◎幻灯『祇園祭』(デジタル上映)上演(語り:紙屋牧子・鷲谷花)

◎総括 高木博志

[登場順]

高木博志:1959年大阪府吹田市生まれ。京都大学人文科学研究所教授。日本近現代文化史専攻。著書に『近代天皇制と伝統文化-その再構築と創造』(岩波書店、2024年ほか。

紙屋牧子:玉川大学ほか非常勤講師。早稲田大学演劇博物館招聘研究員。専攻は映画学・視覚文化。論文に「映画『祇園祭』を伊藤大輔の作家性から再考するー「傾向映画」との接続と非接続」(『人文學報』第116号、京都大学人文科学研究所、2021年)ほか。

鷲谷花:大阪国際児童文学振興財団特別専門員。専攻は映画学、日本映像文化史。著書『姫とホモソーシャル:半信半疑のフェミニズム映画批評』(青土社)ほか。近年は昭和期の幻灯(スライド)に関する調査研究及び、幻灯機と現物フィルムによる上映運動にも取り組んでいる。

祇園祭は7月31日の疫神社夏越祭で1か月にわたって行われる祭が終わります。その祇園祭の思い出に、幻灯で見る「祇園祭」体験もぜひ加えていただければ嬉しいです。ご来場を心よりお待ちしております。

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